[[👤wassan san]]の記事
[SpotifyのCompany Betsとは何か? SmartHRでどのように活用できるか、考えてみた - DocBase](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/3725636)
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- [1\. はじめに](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#1-%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%AB)
- [2\. SpotifyのCompany Betsの背景と目的](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#2-spotify%E3%81%AEcompany-bets%E3%81%AE%E8%83%8C%E6%99%AF%E3%81%A8%E7%9B%AE%E7%9A%84)
- [2.1 背景](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#21-%E8%83%8C%E6%99%AF)
- [2.2 OKRを廃止した理由](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#22-okr%E3%82%92%E5%BB%83%E6%AD%A2%E3%81%97%E3%81%9F%E7%90%86%E7%94%B1)
- [2.3 目的](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#23-%E7%9B%AE%E7%9A%84)
- [2.4 Company Beliefの役割とBetsとの関係](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#24-company-belief%E3%81%AE%E5%BD%B9%E5%89%B2%E3%81%A8bets%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82)
- [3\. Company Betsの具体的なしくみ](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#3-company-bets%E3%81%AE%E5%85%B7%E4%BD%93%E7%9A%84%E3%81%AA%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%BF)
- [3.1 Betsの分類](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#31-bets%E3%81%AE%E5%88%86%E9%A1%9E)
- [3.2 作成プロセスと策定の流れ](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#32-%E4%BD%9C%E6%88%90%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%BB%E3%82%B9%E3%81%A8%E7%AD%96%E5%AE%9A%E3%81%AE%E6%B5%81%E3%82%8C)
- [3.3 Company Betsがチームの自律を促進する理由](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#33-company-bets%E3%81%8C%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%AE%E8%87%AA%E5%BE%8B%E3%82%92%E4%BF%83%E9%80%B2%E3%81%99%E3%82%8B%E7%90%86%E7%94%B1)
- [4\. SmartHRにおける適用可能性](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#4-smarthr%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E9%81%A9%E7%94%A8%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7)
- [5\. 参考情報](https://smarthr-inc.docbase.io/posts/#5-%E5%8F%82%E8%80%83%E6%83%85%E5%A0%B1)
## 1\. はじめに
現在、Agile Coaching Unitでは、労務ドメインのリーダーとともに、「業務カット」の価値を探索できる組織づくりを進めています。その中で、OKRに代わる組織の戦略立案および実行のしくみとして、SpotifyのCompany Betsに着目しており、しくみを調査の上、SmartHRへの適用可能性を考えてみました。
## 2\. SpotifyのCompany Betsの背景と目的
### 2.1 背景
[[🏢spotify]]では、2009年から2014年まではOKRを活用していましたが、うまく機能しないという課題がありました。そこで、戦略を実行するためのフレームワークとしてCompany Betsを導入しました。
※Company Betsは、正確にはSpotify RhythmというSpotifyの戦略策定・実行のしくみの一部です。
### 2.2 OKRを廃止した理由
SpotifyはもともとOKRを活用していましたが、以下の理由により廃止し、Company Betsへ移行したそうです。
- **優先順位の不明確化**:複数のOKRが並行して設定されることで、どれが最も重要かが不明確になり、リソースの集中投下が困難になった。
- **短期目標への偏り**:OKRは四半期ごとのサイクルが多く、長期的な戦略を実行するのに適していなかった。
- **柔軟性の欠如**:OKRは設定後に変更が難しく、市場や組織の変化に迅速に適応することが困難だった。
- **トップダウンの管理色が強くなりがち**:目標が各チームに割り振られる形になり、自律性や現場からの創発的なアイデアが抑制される傾向があった。
- **進捗管理の負担**:OKRの進捗を追跡し、報告するための管理負荷が高く、実際のプロダクト開発や戦略的な意思決定よりも、報告のための作業が増えていた。
Company Betsは、これらの問題を解決するために導入され、**組織の戦略的フォーカスを明確にし、チームの自律性を高めつつ、柔軟に適応できるフレームワーク**として機能し、Spotifyの成功の原動力となりました。
### 2.3 目的
- **長期戦略の実現**:3〜5年のビジョンを、短中期の具体的な取り組みに落とし込む。
- **組織のアラインメント**:部門を超えて同じ方向に向かわせる。
- **実験と学習の促進**:仮説検証のアプローチを導入し、データ駆動で意思決定する。
### 2.4 Company Beliefの役割とBetsとの関係
Spotifyでは、Company Betsの前段階として**Company Belief**を定義しています。これは、Spotifyが信じる長期的な戦略仮説であり、3〜5年先の成長ドライバーを決めるものです。このCompany Beliefをもとに、短中期の戦略としてCompany Betsが策定されます。すなわち、Company BetsはCompany Beliefを実現するための手段となります。Company BetsにはStack rankという明確な優先順位をつけます。これにより、会社全体がいま、何にフォーカスしているかが明確になります。
## 3\. Company Betsの具体的なしくみ
### 3.1 Betsの分類
- **Company Bets**:全社レベルでの大きな戦略的な取り組み。
- **Tech-Product-Design/Tribe Bets**:特定の部門・機能内での優先するプロダクト。技術・プロダクト・デザインの取り組みを統合したうえで、明確な優先順位をつける。**技術的負債の返済と新機能のどちらを優先するかも明らかにする!**
- **Squad/Team Bet**:個々のチームが実施する取り組み。
### 3.2 作成プロセスと策定の流れ
1. データ分析と洞察の抽出(DIBBフレームワーク:Data → Insight → Belief → Bet)
2. 各部門からのBets候補の提案
- 各Betごとに、ゴールと仮説を説明するドキュメントを作成。
1. ステークホルダーを含めた議論による選定と優先順位付け
- Company Bets/Functional Betsは3ヶ月ごとに見直し。
4. リソースの割り当てとプロジェクト開始
5. 定期的な進捗モニタリングと評価
### 3.3 Company Betsがチームの自律を促進する理由
Company Betsは、トップダウンの指示による管理ではなく、戦略の方向性を明確にしながらも、**チームが自律的に取り組める環境を整える**ためのしくみです。
- **戦略のガイドラインを提供**:長期的なCompany Beliefに基づいた優先順位が明確になり、チームは「何にフォーカスすべきか」を理解しやすくなる。
- **実行の自由度が高い**:チームは自分たちの知見を活かして、最適な方法でBetを推進できる。方法論は統制されず、戦略に沿って柔軟に進められる。
- **リソースの確保が容易**:優先度の高いBetsにはリソースが集中し、チームが主体的に意思決定を行いやすくなる。
- **学習と適応が組み込まれている**:Bet(賭け)という言葉にも表れているように、Betは不確実性が前提となっている。そして、Betの進捗は定期的に見直され、必要に応じて変更が可能。Company Betそのものの存在と的確な運用により、失敗が許容され、チームが試行錯誤しながら最適な戦略を見つける文化が醸成される。
## 4\. SmartHRにおける適用可能性
SmartHRが進める「業務カットによる価値の探索」において、Company Betsのしくみは有効であり、戦略の方向性を示しながらも、チームが自律的に価値創造に取り組める環境を作ることが可能になるのではないかと考えます。以下にその理由を述べたいと思います。
- **戦略の大転換期**:SmartHRでは、従来の労務のDXからデータとAIを活用した、人事労務戦略のイネイブラー(攻めの人事労務)と大きく事業変換が求められており、プロダクト組織全体で中長期の戦略を共有することが大切。
- **技術・プロダクト・プロデザを統合した視点**: 新たなデータとAIを活用した顧客価値を提供するには、技術的負債の解消や新たな技術のノウハウの獲得や基盤の構築が欠かせない。Company Betsには、技術・プロダクト・プロデザの観点を統合した優先順位付けのしくみが組み込まれており、これから待ち受ける、顧客の価値 vs 技術的負債の解消と言ったトレードオフにうまく対処できる可能性がある。
- **やっていき**:Spotifyでは、リーダーはビジョンと戦略(優先順位)を示し、どのようにビジョンを実現するかはチームに任される。SmartHRの「やっていき」文化と親和性が高く、SmartHR版のCompany Betsを導入することで、チーム主体での「業務カット」価値の探求が促進される。
## 5\. 参考情報
- [Spotify Rhythmに関するカンファレンスにおける発表スライド](https://blog.crisp.se/wp-content/uploads/2016/06/Spotify-Rhythm-Agila-Sverige.pdf)
- [SpotifyのCompany Betsに関する公式記事](https://www.spotify.design/)
- [SpotifyのDIBBフレームワーク](https://www.tribaling.com/blog/spotify-dibb-framework)
- [Spotifyのアジャイル組織運営](https://www.scaledagileframework.com/spoti-fy-model/)