#Book [[👤西林 克彦]]さん ## 感想 自分は仕事でドキュメントを読む時や、他人と[[🗃️コミュニケーション]]を取る時によく誤った理解をしてしまうことがあったので、それを減らせればなと思って読んでみた。 わかった気になっている状態や、わかったと思ったけど間違っているみたいな状態が一番よくない状態だなと思った。 ↑は[[🗃️ダニング=クルーガー効果]]、完全理解と重なる部分。 これは読み飛ばしをすると起こる。読み飛ばしは、似たような解釈が出ている時、これまで同じような経験をしているときに起こりがちなので、油断しないことが大事。一旦、自分の言葉で整理するみたいな癖ができるといいかも。 あと物語は、人それぞれ解釈していいんだよと言われておきながら、国語の授業では一つの正解を出すことを求められることが腑に落ちていなかったけど、「つまり解釈は、記述との間で整合性がある限りにおいては自由ですが、整合性のないものは許されないという考え」というのは理解できた。 今後、似たような問いがあったときは、これをこれを解凍出来るようにしたい。 --- ## 第1章 「読み」が深まらないのはなぜか？ ### 「わからない」と「わかる」と「よりわかる」 > ① 文章や文において、その部分間に関連がつかないと、「わからない」という状態を生じます。 > ② 部分間に関連がつくと、「わかった」という状態を生じます。 > ③ 部分間の関連が、以前より、より緊密なものになると、「よりわかった」「よりよく読めた」という状態になります。 > ④ 部分間の関連をつけるために、必ずしも文中に記述のないことがらに関する知識を、また読み手が作り上げた想定・仮定を、私たちは持ちだしてきて使っています。 ### 「わかったつもり」という困った状態 > 後から考えて不充分だというわかり方を、「わかったつもり」とこれから呼ぶことにします。再度繰り返しますが、この「わかったつもり」の状態も、ひとつの「わかった」状態ですから、「わからない部分が見つからない」という意味で安定しているのです。 > わかったつもり」が、そこから先の探索活動を妨害するからです。 ## 第2章 「読み」における文脈のはたらき ### 1. 文脈がわからないと「わからない」 > あることがらに関する、私たちの中に既に存在しているひとまとまりの知識を、[[🗃️心理学]]、とくに[[🗃️認知心理学]]では「[[🗃️スキーマ]]」と呼びます。 <中略> > 何の話かがわからなければ、話がわからない」のは、 どの「[[🗃️スキーマ]]」を使っていいかわからない ためなのです。 > その場に応じてある部分の知識を持ちだしてくること、または、全体の知識の一部分にスポットライトを当てて使えるようにすることを、「活性化」と呼びます。記憶の、ある領域を事前に活性化しておくと、その部分の反応が早くなるという、「[[🗃️プライミング]]」などと呼ばれる実験の分野が[[🗃️心理学]]にあったりもします。 > 凧の話だと知らされることで、凧の「[[🗃️スキーマ]]」が「活性化」され、その結果、読み手を文章の処理に向かわせることになるの > 訳がわからなかったのは、「文脈」がわからず、したがって、「[[🗃️スキーマ]]」の発動のしようがなかった からです。それに対して、「凧を作って揚げる」という「文脈」を示されると、私たちは無意識に、ほぼ自動的に、凧に関する「[[🗃️スキーマ]]」を「活性化」して、文章の処理に当たり、その結果、部分間に関連がつき、わかるようになるのです。 ### 2. 文脈による意味の引き出し > わかった状態になったとき、各部分からは、「文脈と矛盾なく関連がつき、文脈を介して他の部分とも矛盾なく関連がつく意味」が引き出されているのです。 ## 3章 これが「わかったつもり」だ ### １．「全体の雰囲気」という魔物（その１） >「よりよくわかる」ための障害は、文章を「わからない」ことではなくて、文章を読んで「わかったつもり」になることなのです。 ### ３．「わかったつもり」の手強さ > 多くの宝物はシルクロードを通ってイランからやってきた」という「わかったつもり」を壊すと、「コピーなのになぜ世界の宝庫なのか」という「矛盾」が出てきました。 　実は、このような「矛盾」や「疑問」は、次の「よりよくわかる」ための契機となる ものです。「矛盾」や「疑問」はネガティブに捉えられることも少なくないのですが、むしろ次の解決すべき問題を発見できたという意味で、「認識の進展」という観点からはポジティブな存在なの 💭矛盾を解消していくことが、自分の理解を深めることにつながるから、いかにこれを潰すのかだ。 ## 第４章　さまざまな「わかったつもり」 ### １．「わかったつもり」を作り出す“犯人”たち > 部分の記述が比較的「新鮮」に感じられるなら、あまり「読み飛ばし」されない のです。したがって、かなり正確に回答されるのです。それに対して、部分の記述が、「ああ、あれだな」と思われるようだと、かなり「読み飛ばし」が起きるようです。その結果、その空白に、そのとき読み手が使っている文脈が侵入し、文脈に適合する都合のいい意味を、部分に与えてしまうのでしょ 💭慣れてきた文脈だと余計に読み飛ばしが起こる。これは仕事でも自分はよくやっていて、問い合わせ対応とかは、これねという感じで読み飛ばしがちになるので、こういうのは気をつけたい。[[🗃️ダニング=クルーガー効果]]だな。 > この大雑把な意味は、全体の雰囲気に合うものですから、部分間にはゆるやかな関連がつくことになり、その結果、一種の「わかった」状態が、作り出されるのです。すなわち、こうやって「間違ったわかったつもり」の状態が成立していたのです。 > 私たちはむしろ文脈を使って部分を読むのです。ですから、文脈を使って、部分から間違った意味や漠然とした意味を引き出して、間違った「わかったつもり」を維持することになるの > わかったつもり」が「間違った読み」によるものでも「不充分な読み」によるものでも、本質的な違いはない ということです。「間違った」または「不充分なわかったつもり」が維持されるのは、いずれの場合も「部分が読めていない」からです。 ### ２．解釈の自由と制約 > 文脈は「 諸刃の剣」です。適切な文脈がなければ「わからない」状態を引き起こしますが、存在する文脈が強力であればあるほど、それによる間違いを引き起こす可能性が高くなるのです。 > 「いろいろあるのだな」と認識した時点で、実は人はそれ以上の追求を止めてしまうのです。これが「『いろいろ』というわかったつもり」の魔力 > 書かれていないことがらを考えるのも、よりよく読むために役に立つことが結構あります。ただ、 書かれていないことがらを考えるためには、それを探索するための道具が必要 であることを忘れないで下さい。 ### ３．ステレオタイプのスキーマ > 「恩返し」に限ったことではなく、「いろいろな文芸作品を読む際に、文章自体からは支持されないにもかかわらず、ステレオタイプ化された『勧善懲悪』や寓話的枠組みでの読みとりなどが生じる可能性が大きいのではないか」とも述べています。 > 問題は、それらの「善きもの」を簡単に、文章のそれらしい記述の部分に当てはめて、それを「読みとり」としてしまうことなのです。つまり、あらかじめ所持していた「心のふれあい」とか「優しい気持ち」といった「ステレオタイプのスキーマ」を文章に簡単・粗雑に当てはめてしまっているのです。 > 私たちは、このように「人間悪者論」とか「地球にやさしい」などといった、現代という時代にマッチする、通りのよい多くの知識を保持しています。これらはそれぞれひとまとまりの知識群をなしていることが多いでしょうから、スキーマというふうに呼んでおきます。 　これらのスキーマが文章を読むときに、「わかったつもり」へと誘う魔物に化すことは、考えられないことではないでしょう。むしろ、それらの危険は、かなり高いものであると考えた方がいいかと思い 💭これ気をつけたいな〜。自分のなってほしいように解釈してしまうとかある。そう考えると陰謀論とかも同じような原理な気がする。 ## 第５章　「わかったつもり」の壊し方 > よく読む必要があるときには、この状態から抜け出さなければなりません。そのために、どのような手だてを施せばよいのでしょうか。 　まず、 自分は「わかっている」と思っているけれど、「わかったつもり」の状態にあるのだ、と明確に認識しておく ことが必要です。すなわち、今は見えていないけれど必ずもっと奥があるはずだ、と認識しておく必要があるのです。 > 読んだ文章について、意識的に自分なりの「まとめ」をしてみることを 奨めます。 💭[[📚アトミック・リーディング 読むことと書くことから考える読書術]]とかでも同じようなこと書いてあった気がする。読書メモとしてまとめ作っていきたい。けど、どうするか型はまだ決まっていないな。 > 内容は、ああ、あれだな」という感じがするときは要注意です。 　この場合、慣れ親しんでいる「[[🗃️スキーマ]]」を意識しながら文章にあたり、それに反する部分を意識的に見つけることを試みて下さい。それが見つかりはじめれば、「わかったつもり」を乗り越える手がかりができます。 > まとめ」があまりにも簡単な場合は、文章構成にミスリードされた各種の「魔物」に搦め取られていることを、疑った方がいいでしょう。 「『結果から』というわかったつもり」「『最初から』というわかったつもり」では、変化の過程が読み飛ばされていますから、それに対抗するためには、どこからどういう変化をしたのだろうという文脈で、文章を見直す手だてが有効なはずです。 💭まとめが、簡単になるとかはよくあるので意識したい。 > 文章の中に出てきた各種の事例やできごとが、個別の特徴を伴って思い出せないときは、「『いろいろ』というわかったつもり」を疑ってみて下さい。面倒になって適当に処理している自分に気づくことが少なくないと思います。 　そして、そのような場合には、事例やできごとに関して個別の特徴を浮き出させることが必要になってきます。 💭これもよくありそう。具体をちゃんと思い出せるように記録しておくというのも大事かも。 > 文章を読んで概略や解釈を述べるときに、「当たり障りのないきれいごと」が出てきたら要注意 なのです。 > ①「わかったつもり」の状態 > ② 新たな文脈による、部分からの新しい意味の引き出し > ③ 引き出された意味による矛盾・無関連による「わからない」状態 ④ 新たな無矛盾の関連づけによる「よりわかった」状態 > 右記の ① から ④ への流れは、「わかったつもり」から「よりよい読み」への進展過程です。しかし、 ④ の状態で終わるわけではありません。この ④ の状態は、新たな ① の状態とも考えられるのです。そこからさらなる進展があり得ることに心を開いておく必要があります。 ### ２．解釈の自由と制約 > ④ の作業には、以下の２種があるように思います。 > （ａ）物事についての客観的な事実に関する情報・知識の獲得 > （ｂ）読み手による想定・仮定、すなわち「解釈」 > もし整合性があり、妥当性があるならば、あり得る解釈の中で、できるだけおもしろく想像を繰り広げたい、ということです。 💭詩の解釈が載っていて、こうやって不整合がないか見ながら、想像を膨らまして解釈することが物語や詩の解釈の正しいやり方なのかなと思ったりした。 > 自らの解釈の「正しさ」を信じたり、「正しさ」を強調することは、他の解釈を排除することにつながりかねません。 > 解釈が妥当であるかどうかを「正しさ」に求めるのではなくて、周辺の記述や他の部分の記述との「整合性」だけに求めたい、というのが私の考えです。 　このように考えることは、次のことを意味します。 ① 整合的である限りにおいて、複数の想像・仮定、すなわち「解釈」を認めることになります。間違っていない限り、また間違いが 露 わになるまで、その解釈は保持されてよいのです。 ② ある解釈が、整合性を示しているからといって、それが唯一正しい解釈と考えることはできないのです。 ③ しかし、ある解釈が周辺の記述や他の部分の記述と不整合である場合には、その解釈は破棄されなければならないのです。 ### ３．試験問題を解いてみる > 文章の解釈は自由であっていい、と先生に言われながら、実際の授業や試験では、ただ一つのものが正答とされたことに対する違和感です。そのせいでしょうか、学生たちにアンケートをとってみると、ほんの一部の者が、文章には一つの正しい解釈（多くの場合、「著者の考え」ということですが）があると答えますが、他の圧倒的大多数は、文章の解釈は各人の自由であってよいと答えるのです。 　もうすでにお気づきの通り、このどちらの意見も正しくないというのが本書の立場です。つまり解釈は、記述との間で整合性がある限りにおいては自由ですが、整合性のないものは許されないという考えです。 💭この考え方めちゃ良い。自分が国語に対して思っていた疑問が見事に解消されていてスッキリした。